児童発達支援と放課後デイにおては、どちらも子どもの発達を支援するために、多岐にわたる支援を提供しています。両施設の5領域(①健康・生活、②運動・感覚、③認知・行動、④言語・コミュニケーション、⑤人間関係・社会性)における支援内容は共通点が多いですが、一方で、子どもの成長に伴う発達段階の違いから異なる点もあります。以下は、児童発達支援ガイドラインと放課後デイガイドラインをもとに、共通点や相違点についてまとめたものです。
1.健康・生活
児童発達支援
・子どもの健康を維持し、生活リズムや習慣を形成することが重要です。
具体的には、健康チェックや基本的な生活習慣(睡眠、食事、排泄など)の指導が行われます。健康な体づくりや基本的な生活スキルの習得を目的としています。
放課後デイ
・ 放課後デイでも、健康管理と生活習慣の確立を支援します。
児童発達支援と同様に、健康チェックや生活習慣の指導が行われますが、学齢期の子どもが対象であるため、学校生活に関連したサポートも含まれます。
■ねらい
児童発達支援 ガイドライン | 放課後デイ ガイドライン |
①健康状態の維持・改善 ②生活のリズムや生活習慣の形成 ③基本的生活スキルの獲得 | ①健康状態の維持・改善 ②生活のリズムや生活習慣の形成 ③基本的生活スキルの獲得 ④生活におけるマネジメントスキルの育成 |
■支援内容の違い
②生活習慣や生活リズムの形成
児童発達ガイドラインには、「さらに、衣服の調節、室温の調節や換気、病気の予防や安全への配慮を行う。」が記載されている。
③基本的生活スキルの獲得
放課後デイカイドラインには、「衣服の調節、室温の調節、換気、病気の予防、安全への配慮等も含めて支援を行う。」が記載されている。
④生活におけるマネジメントスキルの育成【放課後ガイドラインのみ】
「障害の特性や身体各部の状態について理解し、それらが及ぼす生活上の困難や補助機器を用いる際の留意点等について理解を深め、状況に応じて、自己の行動や感情を調整したり、他者に対して主体的に働きかけたりしてより生活しやすい環境にしていくための支援をする。また、自分で何をするかアイデアを出しながら、自分の生活をマネジメントすることができるよう、こどもの意向を受け止めながら、自分で組み立ててできる行動を増やしていけるよう支援する。」が記載されている。
2.運動・感覚
児童発達支援
・姿勢保持や運動能力の向上、リハビリテーションが重要視されます。子どもの運動能力や感覚機能を高めるために、姿勢保持、関節の柔軟性を保つための訓練などが行われます。
放課後デイ
・運動能力や感覚の発達支援が行われます。姿勢や基本的な運動技能の向上を目指す点で、児童発達支援と似ていますが、運動遊びを通じた社会性の発達も重視されます。
■ねらい(すべて同じ)
児童発達支援 ガイドライン | 放課後デイ ガイドライン |
①姿勢と運動・動作の基本的技能の向上 ②姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用 ③身体の移動能力の向上 ④保有する感覚の活用 ⑤感覚の補助及び代行手段の活用 ⑥感覚の特性への対応 | 児発とすべて同じ |
■支援内容の違い
③身体の移動能力の向上
放課後デイガイドラインには、「事業所外での移動や交通機関の利用など、社会的な場面における移動能力の向上のための支援を行う。」が記載されている。
⑤感覚の補助及び代行手段の活用
放課後デイガイドラインには、「他の感覚や機器による代行が的確にできるように支援する。」が記載されている。
3.認知・行動
児童発達支援
・認知の発達と行動の習得を目指します。数や時間の概念を理解し、適切な行動を取るための支援が行われます。感覚や認知の特性を理解し、日常生活に必要な認知スキルを育てます。
放課後デイ
・放課後デイでも認知能力の発達と行動の指導が行われます。数や時間の概念の習得、適切な行動の促進など、基本的な認知スキルの向上を支援します。学習支援を通じて認知能力を高める点が特徴です。
■ねらい(すべて同じ)
児童発達支援 ガイドライン | 放課後デイ ガイドライン |
①認知の特性についての理解と対応 ②対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得 ③行動障害への予防及び対応 | 児発とすべて同じ |
■支援内容の違い
②対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得
・知覚から行動への認知過程の発達
放課後デイガイドラインには、「これらの情報を的確な判断や行動につなげることができるよう支援を行う。」 「状況や目的に応じて適切な判断や行動を選択できるよう支援を行う。」 が記載されている。
4.言語・コミュニケーション
児童発達支援
・子どもの言語発達とコミュニケーション能力を高めます。手話や文字、音声などのコミュニケーション手段を使って、意思表示や言語理解の促進を支援します。
放課後デイ
・放課後デイでも、言語能力とコミュニケーション力の向上を支援します。児童発達支援と同様に、手話や文字などを使った訓練が行われますが、特に学校でのコミュニケーションスキルの向上に力を入れています。
■ねらい
児童発達支援 ガイドライン | 放課後デイ ガイドライン |
①コミュニケーションの基礎的能力の向上 ②言語の受容と表出 ③言語の形成と活用 ④人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得 ⑤コミュニケーション手段の選択と活用 ⑥状況に応じたコミュニケーション ⑦読み書き能力の向上 | 児発とすべて同じ |
■支援内容の違い
児童発達支援 ガイドライン | 放課後デイ ガイドライン | |
③言語の形成と活用 | 具体的な事物や体験と言葉の意味を結びつけること等により、自発的な発声を促し、体系的な言語を身につけることができるよう支援する。 | コミュニケーションを通して、事物や現象、自己の行動等に対応した言語の概念の形成を図り、体系的な言語を身に付けることができるよう支援する。 |
④人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得 | その行動や意図を理解・推測するといった共同注意の獲得等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援を行う。 | その行動や意図を理解・推測するといった共同注意の獲得や場面に応じた言動・対応など人との関わり方についての学び等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援を行う。 |
⑦読み書き能力の向上 | 具体的な支援内容としては、文字の読み書きの指導に加え、情報収集や意思疎通のためのコミュニケーションツールとしての活用方法の指導等を行う。 |
5.人間関係・社会性
児童発達支援
・他者との関わりや人間関係の形成を支援します。友達との遊び方や自己理解を促進し、社会性を育てる活動が行われます。アタッチメントの形成や協同遊びへの移行を支援します。
放課後デイ
放課後デイでも他者との関わりや社会性の育成を支援します。児童発達支援と同様に、友達との関わりや自己理解を促進する活動が行われますが、学校生活での人間関係やグループ活動のサポートも重視されます。
■ねらい
児童発達支援 ガイドライン | 放課後デイ ガイドライン |
①アタッチメント(愛着)の形成と安定 ②遊びを通じた社会性の発達 ③自己の理解と行動の調整 ④仲間づくりと集団への参加 | 児発①〜④+ ⑤情緒の安定 ⑥他者との関わり(人間関係)の形成 |
■支援内容の違い
②遊びを通じた社会性の促進
放課後デイガイドラインには、「遊びを通して、社会性の発達や対人関係の構築を支援する。」が記載されている。
③自己の理解と行動の調整
放課後デイガイドラインには、「自己を肯定的に捉えられる機会を通じて、気持ちや情動を調整し、状況に応じた行動ができるように支援する。」が記載されている。
⑤情緒の安定【放課後ガイドラインのみ】
「自身の感情や気持ち、生理的な状態像に関心を持ち、その変化の幅を安定させることに興味を持つことができるよう援助し、変化の幅が小さく安定した情緒の下で生活ができるよう支援する。」が記載されている。
⑥他者との関わり(人間関係)の形成【放課後ガイドラインのみ】
「他者の気持ちや意図を理解し、他者からの働き掛けを受け止め、それに応ずることや場に応じた適切な行動ができるように支援する。」