放課後デイ・就労継続における相続・事業承継対策

放課後デイ・就労継続等の障害福祉業務においても、事前の相続・事業承継対策をしていないと、万一、ご不幸があった際には廃業の選択肢しかなくなります。たとえ、廃業するにしても残務処理・手続きが多々あり、残された者にとっては大きな負担になります。そのため、何ごとも安定しているときにやお体が元気なうちに、事業譲渡・事業承継・売却・譲渡・廃業に向けて早く動くことが肝要です。

最近、放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援施設の事業承継・売却・譲渡・廃業のご相談が急に増えております。これらは非常に時間がかかるだけでなく、事業承継・売却・譲渡・廃業のノウハウをもつ専門家は少ないため、いざ頼もうとしてもすぐに専門家に頼めるものでもありません。

よくあるケースですが、障害福祉業界で多い合同会社の場合、経営者でも亡くなられると退職扱いとなります(会社法641条1項4号)例えば、放デイ・就労継続支援を自分ひとりで合同会社として立ち上げ、突然亡くなられると自動的に解散となります。

事業を継続するためには、社員が亡くなった場合でもその持分が相続人に引き継がれるように、定款に「社員が死亡した場合、その社員の相続人が持分を承継できる」という条項を追加しなければなりません。しかしながら、多くの合同会社ではこのような相続・事業承継対策が十分に行われていません。なお、株式会社の場合は、社員が亡くなってもその株式が相続人に承継されるため、事業の継続が可能となります。

このような状況を踏まえ、放課後デイ等の障害福祉サービスにおける事業承継等などのM&A(吸収合併等)した場合の、指定申請や利用者対応について整理・簡素化されております。(厚生労働省「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」(事務連絡R6/6/21付)参照)

障がい福祉サービス事業者等の吸収合併、吸収分割、新設合併、新設分割、事業譲渡等に伴う指定の取扱いが整理・簡素化されました。ただし、最終的には指定権者により、取り扱いの詳細は異なるかと思います。

■引き継ぐ法人の事業所として、新規指定は必要
【手続き簡素化】
・実質的に継続(施設・事業所の職員に変更がない等)して運営する場合は、
 指定手続き内容が変更部分のみの届出で可能
 例えば、法人格以外に変更がない場合は、登記事項証明書等を提出で事足りる
・サービス等利用計画の変更を不要とする。
・ 会社法に基づき、旧法人の権利義務を承継する場合は、利用者との利用契約の再締結不要
・障害福祉サービス等報酬上の実績を通算可能
・これまでの補助金等による財産の承継
 →財産の承継が有償の場合は、国庫納付を要する
   無償の場合は、国庫納付を要しない(条件あり)

簡素化例

【通常】
新規指定 
【簡素化】
M&A等の
新規指定 
1.事業所の名称及び所在地 
2.申請者の名称及び主たる事務所の所在地並びに
その代表者の氏名、生年月日、住所及び職名 
3.当該申請に係る事業の開始の 予定年月日 
4.申請者の登記事項証明書又は 条例等 
5.事業所の平面図 
6.事業所の管理者及びサービス 提供責任者の氏名、
生年月日、 住所及び経歴 
7.運営規程 
8.利用者又はその家族からの苦情を処理するために
講ずる措置の概要 
9.当該申請に係る事業に係る従 業者の勤務の体制
及び勤務形態 
10.指定の欠格事由に該当しない ことを誓約する
書面(誓約書) 
11.その他指定に関し必要と認める事項 

事業承継を成功させるためには、早めからの準備が不可欠です。

具体的には、以下の点に留意する必要があります。

・経営理念の明確化
事業承継の目的や方向性を明確にするために、経営理念を改めて確認する必要があります。

・事業の健全化
事業承継を円滑に進めるためには、事業の健全化が重要となり、収益性の向上、コスト削減をするとともに、リスク管理などを見える化をしていく必要があります。業務の改善やITツールの導入などをにより、経営の効率化を図ることで、従業員や後継者に円滑に承継することができます。

・後継者の育成
事業承継を成功させるためには、経営理念やノウハウを継承できる人材の育成又は育成することが必要になります。

・関係者との協議
事業承継には、金融機関、職員、利用者、行政機関など、様々な関係者が関わります。円滑な承継のためには、関係者との協議を早めから進めることが重要です。M&Aであれば、事業承継を迅速に進めることができます。後継者を見つけるのに時間がかかる場合や、事業承継をスムーズに進めたい場合に有効です。一方で、職員の不安が発生する可能性があります。経営体制や雇用条件が変更される可能性があるため、職員に丁寧な説明を行うことが重要です。

また、経営の効率化 経営の効率化を図ることで、利用者にとってより良いサービスを提供することができます。業務の改善やITツールの導入などを検討しましょう。

最後に、障害福祉業界、とりわけ放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援施設などは少人数で運営していますので、大黒柱である経営者の影響度は計り知れません。手遅れになる前に、お早めにご相談ください!