日本の社会では、高齢化が進む中で、身寄りがない、または家族との関係が希薄な高齢者が増えており、とりわけ独りで生活している「おひとりさま」を支える制度として「後見人制度」が注目されています。札幌市を含む北海道では、都市部と地方の差があるものの、この問題は着実に顕在化しています。ここでは、札幌における「おひとりさま」の高齢者とその後見人制度について、詳細に解説します。
1. 札幌における高齢者問題
札幌市は北海道の中心都市であり、人口約200万人のいち約40%が高齢者という状況です。特に「おひとりさま」と呼ばれる、配偶者を持たない、もしくは子どもがいない高齢者が増加しており、この層の社会的孤立が深刻な問題として浮き彫りになっています。
とりわけ、札幌市は大都市(政令指定都市)の中でも、65歳以上の単身世帯は全国平均よりも高い割合を占めており、その傾向が顕著です。
地域社会のつながりが希薄化する中で、これらの高齢者は、経済的な困窮や健康問題に加え、孤独感に悩まされています。このような状況下で、後見人制度は、高齢者が安心して暮らすための重要な支援策として注目されています。
2. 後見人制度の概要
後見人制度は、認知症や精神疾患などにより、自分自身で判断したり、契約を結んだりすることが困難になった人のために、家庭裁判所が後見人を選任し、その人の代わりに、またはその人のために必要な行為を行う制度です。成年後見、任意後見、家族後見など、様々な種類があり、本人の状況に合わせて適切な制度が選択されます。日本では、成年後見制度として以下の種類があります。
- 成年後見人制度:主に認知症や知的障害などで判断能力が不十分な成人を支援する制度です。
- 任意後見制度:あらかじめ契約を結んでおき、後見人を選ぶ制度で、元気なうちに「将来に備える」という形で後見人を指定できます。
- 家族後見人:家族が後見人になるケース。
- 社会福祉士や行政書士など専門職後見人:家族がいない場合や家族が後見人に適していない場合、専門職が後見人を務めることがあります。
成年後見人には、金銭管理、契約締結、医療の同意、介護施設の選定などの権限があります。後見人が関わることで、高齢者が不当な契約を結んだり、詐欺にあったりすることを防ぎ、生活の安定を図ることができます
後見人を選ぶ際のポイント
後見人は、本人の意思を尊重し、その利益のために活動することが求められます。信頼できる人を選ぶことが大切です。
- 信頼できる人: 家族、親族、友人など、普段から信頼している人を選ぶ
- 専門知識のある人: 行政書士、弁護士、社会福祉士など、専門知識のある人を選ぶ
- 中立な立場の人: 家族以外の、中立な立場の人を選ぶ
後見人制度を利用するメリット
後見人制度は、高齢者にとって以下のようなメリットをもたらします。
- 財産管理: 不当な契約を結ばれたり、詐欺に遭ったりするのを防ぎ、財産を適切に管理することができます。
- 生活の安定: 医療費の支払い、薬の管理、食事の用意など、日常生活の様々な場面で支援を受けることができます。
- 孤独の解消: 後見人と定期的に会うことで、孤独感を解消し、精神的な安定を得ることができます。
- 家族の負担軽減: 遠方に住む家族は、後見人に任せることで、高齢者の世話に関する負担を軽減することができます。
後見制度を利用する際の注意点
- 費用: 後見制度を利用するには、費用がかかります。
- 手続き: 任意後見制度であれば公証役場で公正証書で作成しなければなりません。家庭裁判所への申立てなど、手続きが複雑です。
- プライバシー: プライバシーが侵害される可能性がありますので信頼できる方へ。
札幌市における後見人制度の現状と課題
札幌市では、成年後見制度の利用促進に向けた取り組みが進んでいますが、依然として課題は残されています。
- 後見人不足: 後見人になる人が不足しているため、制度の利用が遅れるケースがあります。
- 費用問題: 後見制度の費用が高額であるため、利用をためらう人がいるという問題があります。
- プライバシー問題: 後見人が本人のプライバシーを侵害する可能性について懸念されています。
より一層の普及のためには、以下のことが求められます。
- 地域社会の連携: 地域住民やボランティアが、高齢者の生活を支援する活動に積極的に参加する。
- 専門職の育成: 後見人や、後見制度に関する相談に対応できる専門職を育成する。
- 制度の簡素化: 手続きを簡素化し、利用しやすい制度にする。
※札幌市成年後見制度利用支援事業
判断能力が不十分となった認知症高齢者が財産管理や身上監護における保護が必要となり、4親等内に成年後見制度の申立てをする親族がいない場合に、札幌市長が家庭裁判所に対し成年後見開始の審判申立てを行います。また、収入や資産等の状況から、後見・保佐・補助開始の申立費用(鑑定費用)や、成年後見人等に対する報酬を負担することが困難な方に対して、助成を行っています。